SANplusICHI

「反省しろ、まずはそれから」

今日は天気が良いので。

ジョンとシャーロックがレストレードで遊んでる小話。



今日は、というべきか、今日も、と言うべきか、奇怪難解な殺人事件を推理し解決したシャーロック・ホームズは、彼曰く“無能なヤード共”に疑いの眼差しを向けられていた。
どんな疑いかと言うと

「まるで僕が犯人じゃないのかと言わんばかりの顔をしている」

まぁ、…そういうことで。

「自分の理解出来ないものは信じられないもんだよ。」

と彼の助手が宥める。アメリカンコミックのヒーロー・バットマンで言うところのロビン。シャーロックの助手はジョンと言うけれど。(正しくはジョン・ワトソン。ミドルネームはヘイミッシュ。)

「ふん。だから無能なんだ。」
「君に言わせりゃ僕もバカなんだろうけど、僕は君の推理を素晴らしいと思ってるよ。」
「確かに君はバカだが、無能じゃないようだ、ジョン。」
「勿論!知ってるとも。」

シャーロックが推理してみせた通りの物的証拠を探しながら、“無能なヤード共”がじろじろと彼らを怪訝な顔で見やるも、彼らは気付かないのか気に掛けないのかそれでも話を続けた。

「彼ら、ハリー・ポッターが目の前で魔法を使ってみせても信じないね。」
「ジョン!そんな!彼は我が国の超有名人だぞ?!」
「あぁ、きっと駄目だろうね。」

ジョンがかの有名な魔法使いの名前を例に出してみると、シャーロックが驚きを隠せないという様子で聞き返したら、ジョンが腕を組んで頷いた。

「まさか…ペガサスでも?」
「彼らのことだ、ただの突然変異と罵るよ。」
「妖精はさすがに…」
「見なかったことにしてコッソリ手で磨り潰すだろうね。」

今度はシャーロックがこの国では有名な類の“生き物”を例に出して質問をぶつけると、ジョンはヤードをちらりと一瞥してはシャーロックの出した例に答えをやった。

「それは酷い!しかしこれで納得したぞ、ジョン。成る程。僕が信用されないわけだ。」

仰々しく嘆くシャーロックと、やれやれと肩をすかすジョン。
この国では幽霊でさえ住民票を得るのだ。

レストレードは、父親宜しく、わなわな震えながら2人の子供に怒鳴るのだ。
父親が仕事に行けないようにローファーを隠した子供たちがクスクスと声を潜めて笑い合っているかのような2人。
君達はいい年の大人だろう。シャーロックに関してはそんな常識通じないかもしれないが、ジョン!君まで!

とにかく!

「全部聞こえてるぞ!!!」

2人の子供はニヤリと笑いながら声を揃えて父親に反論する。

当然だ!聞こえるように言ってるんだから!

咄嗟に出そうとした罵声がレストレードの喉に詰まって、声として形成されなかった。思わず天を仰ぎ見る。ああ今日は良い天気だ。この国じゃあ珍しく。普段はどんよりしたこの国の天気のようなコンサルティング探偵の機嫌も、今日のような天気の良いはカラッと晴れているようだし。それは良い。それは良いが…。

問題児の父親たるレストレードの苦労は推して知るべし。




奇怪難解な殺人事件は解決し、彼らの平穏で平常な平和が訪れる。
高機能社会不適合者の探偵が「退屈だ!」と叫び出すまでは。



「Boring!」



2013年2月10日