SANplusICHI

「反省しろ、まずはそれから」

やっぱり兄貴はクソッタレだった

ダリルちゃんはゲイ設定される可能性が無きにしも非ずってことで、私がさっさとゲイ設定しときました!( ˘▽˘ )
シモいギャグ/キャラ崩壊注意で…。
「不機嫌は~」の話のパロディみたいな…。



「お前マジでゲイになっちまったのか!」


メルルの発声を聞いてダリルは思わずメルルの口に持っていた雑巾をぶち込んだ。

「でけぇんだよ声が!」
「ゲェッ!ぺっぺっ!てめぇ何しやがる!」
「あんなでけぇ声で言われたら聞こえるだろうが!こっそり相談してんのに!」
「いいじゃねぇか聞こえたって」
「だめだろ。今からどう手を出そうかと作戦練ってんのに警戒されるだろうが」
「そこかよ!バレてみんなに引かれたらどうしようとか心配しろよ!」
「バレてみんなに引かれてアイツが同情して付き合ってくれんならいっそバラすわ」
「どうした弟よ、どうした…!離れてる間、お前に一体何があったんだ…!;」
「ガチで心配してんなよ!;」


ウッドベリーで捕まったダリルを助ける際に、ガバナーに裏切られたメルルも一緒に脱出した。
当初はメルルを受け入れられないメンバーが居り、ダリルはメルルを連れていては刑務所には帰れず、兄弟二人で生きていくとリック一行の元から離れた。しかし、ダリルの中で『とある事』がどうにも引っ掛かり、一度は離れようとしたが、結局は実の兄よりも刑務所に戻ることを選んだ。刑務所に近づくと激しい銃声が聞こえ、思わず走って駆けつけるとガバナー達が刑務所を襲った後で、ウォーカーたちがフェンス内に侵入していた。フェンス外に出ていたリックがウォーカーに襲われているのが見え、ダリルはメルルと共にリックを救出したのだった。
この件以来、うやむやにはなってしまったがメルルは刑務所に居ついていた。メルルに傷つけられたグレンやマギー、ミショーンはもちろんのこと、他のメンバーもメルルを歓迎する空気ではなかったので、彼は刑務所に居てもほとんど単独行動が多かった。メルルもあえて他のメンバーと接触しようとしなかったので、食事に関してはダリルがメルルの元に持ってきて兄弟一緒に食べていた。

リックは、メルルとダリル…兄弟の感動の再会とはならなかったので、せめて今ぐらいは兄弟の時間を作ってやってもいいかと思い、しばらくは好きにさせていた。その気遣いを知ってか知らずか、ダリルは『とある事』を兄メルルに相談していたのだ。リックがメルルと距離を置いているうちに。何故なら彼の『とある事』とはリックのことだからだ。

「兄貴って軍隊行ってたんじゃねーのかよ」
「ふぁ!?軍隊行ってたからってゲイのことが詳しいわけじゃねーよ!」
「…昔から肝心なとこだけホント役に立たねぇよな、アンタって…」
「ダリーナちゃんのくせに生意気だなオイ!」
「ダリーナって言うな!どっちかって言うと抱きたい側だ!」
「もうお前なんか俺の弟じゃねぇ!童貞臭い俺の可愛いダリルはどこに!」
「童貞はアンタの女に取られたけどな」
「どいつだよ」
「金髪のビッチ」
「…全部金髪じゃね?」
「それ以外覚えてねーよ」

ダリルの童貞喪失の話はさておき、もうお気づきの方もおられるとは思うが、『とある事』について明確に提示しておこう。それは『ダリルはリックが好きだということ』だ。

「今なら好きなヤツを孕ませたいって気持ち分かる」
「黙れよ。孕まねーよゲイは」

もちろん性的な意味で。ってやつだ。
そもそもダリルは元からゲイの傾向があった。それの原因はいくつかあったが、パーセンテージにして大きく割いているのが、童貞喪失の際に脳に刻まれた女性への恐怖だった。ダリル自身それが理由の1つだとは気付いてないし、メルルも知らないわけだが、この度ダリルをゲイだと責めるメルルにも非があるというわけだ。ダリルが今まで色んな女性とうまくいかず、迫られては華麗に躱し、フラグを立ててはブチ折っていたのは、ひいてはメルルが原因でもあったのだ。

「で、お前はあの保安官とどうなりたいんだよ」

メルルは豆の缶詰をスプーンで頬張りながらダリルに聞いた。今日の朝兼昼飯は缶詰だ。昨日の晩も缶詰。昨日の昼飯も缶詰。おそらく今日の晩も、明日の朝も缶詰・缶詰・缶詰だろう。

「…付き合いたい」
「………あー?つまり…?」
「?」
「付き合うって、具体的に何すんだよ。ファックすんのは分かってっから言うなよ」
「俺は…リックを支えたいだけなんだよな。アイツの支えになってた奥さんが死んじまったから、代わりになってやりたいっつーか…」
「保安官のオンナになりたいってことじゃねーかよ」
「まぁ、そういうことなんだけどよ」
「掘られたいのかよ、保安官に」
「別にそっちでも構わねーんだけど、リックが俺に勃つのかっつったら…どーよ?兄貴って俺で勃つ?」
「キメェ。殺すぞ」
「即答じゃねーか」

思わず悪寒が走ったメルルはいかにも寒そうに両手で自分の肩を摩った。

「お前は保安官相手にイケるっつーわけか」
「ぶっちゃけ余裕どころの話じゃない」
「詳しく知りたくねーから黙っとけよ」
「いや、聞いてくれよ兄貴」
「なんで食ってかかってんだよ!聞きたかねぇよ!あと、今お前に兄貴呼ばわりされたら俺までソレっぽいだろうが!」
「こんな話、他のヤツに出来ねーだろ」
「俺にもしてんじゃねぇ!」



+++



俺が元々ゲイの傾向があるとは言え(女と付き合ったことがないわけじゃないしな)リックのことを最初からそういう目で見ていたわけじゃなかった。
そりゃあ「すげー肌つるつるだな触りてぇ」とか「綺麗な目してんなー見つめられてぇ」とか「なんで男のくせに唇がそんな赤いんだよキスしてぇ」とか思わないでもなかったが、リックだから特別そう思っていたわけじゃなくて、元々ああいう見た目が好みだってだけだった。

リックに対して特別な想いを抱くようになったきっかけは、山小屋で二人っきりの一夜を過ごした時に起きた。その時点でロマンス的な何かがあったというわけじゃないが、その出来事は確実に俺をゲイだと自覚させた。

リックが他のメンバーでなく何故俺を誘って物資調達や狩りに出かけるのかというと、機動力があり狩りに慣れ戦闘力もあって独り身だったのが俺しか居なかったからだと思う(実際に言われたわけじゃねーけど)。つまり連れ立ち易く役に立つからっていう至ってド・シンプルな理由からだろう。だから別に「もしかしてリックって俺のこと…」なんて勘違いすることもなかった。

でもまぁ、それまでリックに対してそういう意味で好きだとは思っていなかったにしろ、リックには多大な信頼を置いてた。人生の中で期待なんかされたことない俺に対して、リックが期待し頼ってくれたのが始まりだった。まるで暗闇を歩く俺にリックが懐中電灯で道を記したような感覚だった。

その晩は、仲間の居る野営に戻るまでにウォーカーの群れに阻まれて足止めを食らった。夜になり暗い森の中を歩くのは危険だったので、昼のうちに見つけた山小屋で朝を待つことになった。こういうことは前にもあったので、声をかけ合わなくてもリックの考えてることが分かり、二人で山小屋に向かった。

俺がそこでウォッカを見つけ、体温を上げるためにも2人で1瓶を空けた。
俺自身はアルコール度数の強い酒にも慣れていたが、リックは空腹の上で飲んだその酒に呑まれちまってた。呂律が回っていないにも関わらず、ずっと吐き出したかったのか、シェーンやローリのことを話し始めた。これも信頼されている証拠だな、と思って黙って聞いてた。
話を聞きながらリックを見てると、いつもみんなを引っ張る背中がなんだか弱々しく見えて、1人じゃ座ってられないんじゃないかって思ったら、あーーー抱きしめたい…なんて思い始めた。(先に言っておくとこの時点ではまだ下心は無かった。本当に。純粋に抱きしめて支えてやりたいと思ってただけだった。)
そう思ってリックを見てると肩が震えてた。「寒いのか?」って聞いたら「んん、とくに。」って眠そうに舌足らずに言うもんだから「酔ってて自分が寒いのかもわかってねぇなこりゃ…」と呆れた。

「ちょっと待てよ。確か毛布があったような…」

部屋の隅に毛布らしき物が置いてあったのを思い出して取りに行くと、あったにはあったが1枚しか無かった。しょうがねぇ、俺にはコレ(ポンチョ)があるしな。と思いながらリックの背中から肩にかけて毛布を巻いてやった。

「毛布はアンタが使え。俺にはこれがある。」
「かぜひくぞ」
「しょうがねぇだろ、毛布は1枚しかない。」
「…そうか」

そんな会話してると急にリックに腕を引かれて毛布の中に引きずり込まれた。

「な!?」
「いっしょにつかえばいい」
「ハァ?」
「あったかいだろ?ふたりのほうが」

この発想は無かった…!
ていうかスゲェ近い!!!
顔近いのにふにゃって笑うなよ可愛いな!狭いからってくっつくなよあったけぇな!お互い風呂入ってないのは十分分かってっけどアンタの匂い嫌いじゃねぇわ…!とか思ってるうちにあることに気付いた。
(ああ、やばい。俺のもんになればいいのに。って思っちまった。)
だってローリと居る時より今のが幸せそうじゃねぇか。そう見えるのは俺の自惚れか?
俺のもんになれば今よりもずっとちゃんとアンタのこと守ってやれるのに。シェーンとかローリとか色々悩まなくたって済むのに。何も見たくないっていうんなら見なくていいって言ってやりたい。俺が目隠ししてやりたい。
…まぁ、そんなこと出来ないって弁えてるけどな。解ってるけどな。だからなんもしねぇけどな。

そっとリックの腰に腕を回した。(いや、狭いせいだから)
なんだこれ、細いっつーか薄い…。ますます守ってやりたくなるなコレ…。

「…確かに。あったかいな。」

このまま時間が止まればいいのに。…って、俺の柄じゃねーけど、そう思いながら寝ようとした。




…が、すんなり寝れるわけなかった。
今まさに好きだと自覚した相手と毛布1枚で山小屋で二人っきりとか寝れたもんじゃなかった。
俺が腰を抱いてるせいでリックが俺の方にもたれかかって寝てるし、それによってリックのふわふわの癖っ毛が鼻についてこしょばいし、ひと肌があったけぇし、心なしかいい匂いがしてしょうがない(風呂入ってないはずなのに)。間近で見るとますますリックって綺麗な顔してるよな…まつ毛長ぇ…ぼんやりとそんなことを思ってると自然に頬を撫でてた。
そして勃った。
頬を撫でると思ってた通りつるつるで、思ってた以上に柔らかくて、キスしたいとか思ってたら勃っちまった。毛布から出たらバレると思ったので必死で兄貴の痴態を思い浮かべてなんとか治めた。(自分で想像しといてマジでキモかった)

明日、朝までムラムラしてたらリックの寝顔でヌこう。
そう心に決めてその日は無理矢理寝た。



+++



「あああああてめぇ勝手にペラペラしゃべってンじぇねぇよ!聞きたかねーんだよ!あと俺の痴態ってなんだよ!俺がキモイわ!」
「聞いてくれて…さんきゅ…」
「勝手にしゃべっただろうが!照れてンじゃねぇよ!」
「兄貴に礼言うのが照れくさいだけなんだから勘違いすんなよ」
「そんなツンデレいらねーんだよ!」

「家族団らん中のようだが、ちょっといいか?」
「リック!」

リックがドア前で立って二人に声をかけた。彼の手の中には赤ん坊が抱かれている。

「いつからそこに!?」
「ん?今来たところだが…」
「そ、そうか。」

先ほどの話をリックに聞かれていたとしたら大変居た堪れないのでダリルは焦って食って掛かったが、リックのきょとんとした様子を見てホッと胸をなでおろした。

「助けてくれた礼、言ってなかったからな。メルル。」
「!お、おう」

メルルは弟の狼狽した様子に内心笑いが込みあげてきていたが、唐突にリックに名前を呼ばれて驚いて返事した。まさかわざわざ礼を言いに来るとは思わず面食らってしまう。

「おかげで命拾いした。ありがとう。」
「おう…」

メルルはリックの腕の中に居る赤ん坊を見つめた。それに気づいてリックが何か言おうとしたがローリを思い出して言葉に出来ない。

「ああ、この子の母親は………」
「親父も失くすところだったな。アスキッカー。」

ダリルがちょいちょいと赤ん坊の頬をつつく。赤ん坊も少しむずがるくらいで特別嫌がったりはしなかった。

「抱いてみるか?」
「俺が?!」

メルルはリックに差し出された赤ん坊をおずおずと受け取る。その軽さに、小ささに、尊さに抱きつぶしてしまわないか少し不安になる。

「…ちっせぇ」
「だろう?」

メルルがまじまじと赤ん坊を見つめるのが、なんだがおかしくてリックもつい笑顔になる。もういい、とメルルが不器用に赤ん坊をリックに差し出し、リックは優しく抱きとめた。

「じゃあ、俺は向こうに戻ってる。あ、ダリル。話したいことがあるから後ででも声をかけてくれ。」
「わかった。」

そしてリックが去っていくのを兄弟は目で追った。




「…」
「…」
「ダリル」
「………」
「俺も好きかもしれん。」



その日、生まれて初めてダリルは実の兄の首を絞めた。



やっぱり兄貴はクソッタレだ!
2014年9月30日